
南米EC最大手で急成長中 メルカドリブレ【MELI】
今回は、コロナで多くの企業が苦戦を強いられている一方で、逆に業績が拡大しているEC業界。
その中でもまだEC途上国である南米を舞台に事業を展開しているEC企業を調べてみる事にしました。
メルカドリブレ【MELI】
グロース株好きの方は聞いた事があるのではないでしょうか。もっと言うとコロナ禍以降に知った人も多いと思います。
同社は株価の勢いも驚異的でコロナショック後、約2~3倍も株価が急騰しています。
過熱気味にも思えなくもないですが、ECが今後も拡大し続ける前提で足元の業績も勢いがあるのであれば一概に割高だとは言えませんよね。
かく言う僕もアフリカのEC企業 Jumiaという、当たるか、はずれかるか、まったくわからない債務超過一直線の宝くじ株を握りしめて待機しています。笑
その点同社の業績は直近は赤字でありながらも安定しています。
というのも通信・物流のインフラがまだまだ整っていないアフリカよりも、ブラジルを中心とした南米の方が先にEC化が加速するのは確実だろうと思っています。
そんな勢いのある南米EC市場で先頭を走るメルカドリブレ。
現時点の南米ではアマゾンよりも使い勝手がいいと好んで使われている企業です。
熱帯雨林のアマゾンがある南米で、ECの巨人アマゾンが勝てないという(※どうでもいい)状況を作り出しているのがメルカドリブレです。
…はい、くだらない言い回しは置いておいてまずは事業内容から見てみましょう。
事業内容について
さて、メルカドリブレ。まず社名が気になります。日本の「メルカリ」を彷彿とさせる社名です。
メルカドリブレ。スペイン語で「フリーマーケット」という意味らしいです。
なるほど。日本のメルカリもそこの由来から来てそうですね。
日本でフリマ、というといわゆる中古品や自作商品を販売する場みたいな感覚ですが同社、
メルカドリブレは
南米でECモールを運営しつつ、最近はフィンテックにも乗り出している企業
という位置づけになります。
南米最大のEC企業でありブラジル、アルゼンチンなどをはじめ18か国で事業を行っています。
世界で見ると、アマゾン。日本で見ると、楽天。
のようなイメージでECプラットフォームを顧客に提供して売上の一部、販売手数料をもらう、というようなビジネスモデルです。(当初は)
またプラットフォーム内で自社直販も強化しているため、ECという枠組みの中ではどちらかというと楽天よりもアマゾンの方に形態は似ているのではないかと思います。
そんなECを主軸にしてフィンテック。ロジスティクス(物流)、広告等と関連市場の範囲でビジネスを展開しています。
メインの売上はECですが、そのECの勢いを支えているサービスが同社のフィンテックサービスと言われているようです。
ECサービスを展開する一方で、消費者には南米独自の決済サービスも合わせて提供しており、その名は
「Mercado Pago」(メルカドパゴ)
急速に経済が発展していると思われる南米においてもアフリカ同様、いまだ銀行口座を持てない層は現在も多く存在しています。
そんな層の消費者に向けて提供されている決済サービスが「メルカドパゴ」です。いわゆるフィンテックサービスでQRコード等による決済方法を提供しています。
これによりアマゾン等ではカバーできない層を取り込み急成長を見せている、という構図のようです。
さらに直近の10-Kを見ていると物流サービスもかなりの勢いで強化しているのでは?という事も感じました。
物流拠点と思われる賃貸物件の大幅な増加や、それに伴う償却費の増加など…(詳細については後ほど。)
そんなわけで高成長を続けていた中でコロナによる想定外の需要増でさらに急拡大し、1番直近のデータである2020.Q2期間には約5,150万人のユーザーに利用されており、前年比で比較すると約45%もの増加率を記録しました。
それに伴い、売上も約61%増加とコロナによってますます成長の勢いを加速しているようです。
業績について
それでは過去6年間の業績について見ていきましょう。
ちょっと変わった道のりでここまで来てるように見えるので面白いです。
売上の成長率
まずは売上についてですが、2018年の成長鈍化が気になりますが基本的には順調に右肩上がりで業績を伸ばしています。

特に2019年は前年比60%増と勢いがあります。
南米市場で拡大を続けている同社ですが今現在の国別の売上構成比を出すとこのような割合になります。(おおよその割合です)
アルゼンチン:約20%
メキシコ:約10%
その他:約5%
特にブラジルは前年比でも約1.7倍の増加となっており、同社の業績を引っ張っている大事な市場です。
気になる2018年の成長鈍化の背景は同社のベネズエラ事業の非連結化(事実上のデフォルトのため)があったので相対的に成長率が鈍っているように見えます。
その影響がなければ前年比約20%の増収率となりますので実際は二桁成長を維持している事になります。
もうひとつ。2017年を境に売上の伸びが急になっているように見えますよね。市場が成長した事も大きいですが、実は他にも要因がありました。
『送料無料』施策。
あれです。楽天の三木谷社長が、楽天の送料無料施策を(店舗負担で)取り入れるための口実にEC先進国である日本市場で無理やり持ち出してきた「メルカドリブレの送料無料」施策。
メルカドリブレは会社側が負担する施策(一部か全部かは不明)ですが、楽天は100%店舗負担。最初だけ送料の4分の1ぐらいの補填金もありましたが「最初だけ」。
…おっと、個人的な愚痴が…すみません。
話を戻します。
そんなわけで当時の10-Kにもありますが「送料無料施策の負担とロイヤルティプログラムのコスト増によるもの」「ベネズエラ事業の非連結化による損失」とあります。
業績拡大をスピードアップさせるため送料無料でユーザー集めに注力、さらに同社の物流サービスの充実化による先行投資で急激な粗利減
となりました。
このタイミングで直近の黒字を意識するよりも潜在的な需要を掘り起こして将来の大きな利益を狙う戦略に切り替える事に。
(昔のアマゾンもそんな感じの戦略でここまで巨大になりましたよね。)
もう少し売上について気にしておいてほしい事があります。
それはマーケットプレイスの売上と非マーケットプレイスの売上の構成比について。
2017年は6:4の割合でした。
一番最近の2020.Q2期間(6か月)では、「コマース部門」と「フィンテック部門」の2つの分け方に変わったため正確な構成比は不明ですが、「マーケット~」、「非マーケット~」で表示されている2019年までの内容を見ると今では恐らく半々の構成比になっているように思います。
そして「フィンテック」に分けたという点はこれからもフィンテック部門の業績がコマースと同じ、もしくはそれ以上の勢いで伸びていく可能性が高い、という風にとらえる事もできるかもしれません。
また、最初の方にも書いていますがコロナの影響があった2020.Q2までの業績も非常に順調で前年比50%増で成長を維持しています。
このままのペースでいけば今期は通期で30億ドル越えもクリアしてきそうな勢いです。というか恐らく達成します。
同社の収益性
さて、次が気になる利益面です。

『…なにがおきたの!?( ゚Д゚)』って感じですね。
この辺からちょっと特徴のある業績の推移になっているのが見え始めます。
売上は利益が減少してる間も順調でしたが、2016年まで安定した利益率が2017年度から一転します。
1番の理由は上記にも書いた「送料無料」施策の影響が大きいです。
ですが、この辺の時期から同社の株価が大きく動き始めます。
この時に表面上の業績しか見えてない場合はこれから株価も下落するだろう、と思ってしまいがちですが同社の場合は2016~2017年あたりから株価は利益とは逆に急成長します。
これは同社の利益優先ではなく規模の拡大を市場が評価したため、と言えると思います。
当時はこの会社も知らなかったのでなんとも言えませんが恐らく今後の「事業構造の変化」をうまい事、市場に伝えられたのではないでしょうか。
(そして、その時に保有していればテンバガーになっていた銘柄です。)
利益率の低下の原因をもう少し掘り下げてみます。
まず2017年に限って言えば、
・営業利益の減少は『メルカドパゴ拡大のためのチャージバック費用が重荷、ベネズエラ事業の損失』
等が原因で利益が大きく減少しました。
どちらも規模拡大に沿った施策だとわかるので、まぁ悪い減益ではないと判断できます。(※後だし論)
次に2018年、さっそく業績は赤字になります。
この時はベネズエラの損失もないですが、引き続き上記の先行投資費用が重く利益を圧迫しています。
粗利率もさらに約3ポイント悪化し営業費用についても約1億ドルほど(前年比15%増)増えました。
2019年も同じような感じで進み2020.Q2になってコロナによる拡大傾向もあり、四半期ベースでは一旦黒字に戻しました。
それがここまでの流れです。
では、今期Q3以降がどうなるかが大事ですよね。
2020.Q2は粗利率はほぼ変わらないもののコロナによるEC拡大で相対的にマーケティングのコスト効率が改善されたような状況になりました。
構造的に大きく変わったというわけではなく、コロナのおかげで一時的か持続するかはまだ判断できかねますが、今回のコロナによって同社の損益分岐点が見えてきたように思います。
そして、それはかなり近い数字(2020.Q2の実績を参考)である事も実証された事になるのではないでしょうか。
Withコロナの世の中になるとすればもしかしたら今期中にでも営業黒字を達成するでしょうしコロナが万が一、完全に収束したとしても南米にとってECの潜在的需要が今回掘り起こされたのでどちらにしても今期か来期で黒字化するのではないかと思ってます。
もちろん次の投資ステップ(更なる規模の拡大)に進まず収益化を目指したら、という場合ですが。
キャッシュフローの推移
と、ここまで見てなかなか面白くなってきそうな企業だと感じますよね。
はい。次にキャッシュフロー。

こうやって見ると営業CFが一見、大幅な黒字になっているように見えますが
実際は「Funds payble to customers」(顧客への支払資金)がまだ手元に残っているだけで、
2017年は2.4億ドル。
2018年は1.7億ドル。
2019年は2.6億ドル。
がプラス要因になっているので、
本業はやっぱり赤字のままです。(2019年まで)
運転資金の増減を含んでいるのでキャッシュがあるように見えるだけで、あるように見えるキャッシュの一部は会社のお金じゃなくて顧客(に支払う予定)のお金が多く混ざっています。
あとは買掛金等の支払い義務のある債務額も1億ドル以上あるので、それ払ったらキャッシュはほぼ残らないかマイナスになる感じでしょうか。
なので利益うんぬんについては素直に営業利益等を見るのが正しく把握できると思います。
CSを見て他に気になる点としては、
同社はEC関連の企業なので設備投資費はそんなにないだろうと思ってましたが2019期の減価償却費が約0.73億ドルとあったので、思ってたより設備投資に資金を割り当ててる印象です。
固定資産も2018年と比較すると約1.5倍にも増えているようですね。
固定資産の内訳を見てみるとアルゼンチンが5,800万ドル⇒1億ドル。ブラジルが7,800万ドル⇒1億ドル。となっており、ここにきてアルゼンチン地域の資産が増加してきました。
さかのぼってみると2018Q3期間から増えてますが、そこから今までにアルゼンチンの企業2社の買収やソフトウェア、設備への投資があったようで、その影響で増えているみたいですね。
更に、配送センターやオフィスの契約等のリース資産も増えました。
どこにどれだけ、という所まで見る事ができませんでしたが、配送センターを始め物流インフラにはそれなりの投資をしているんじゃないか、と勝手に推測してます。笑
2019年度に営業費用が増えたのはその影響(物流強化や人員増強)もあるのかな、と思います。
ただし、これはあくまで先行投資なので成長が追い付いてくれば何も問題ありませんね。
そして今のところ成長も思っているよりも早く追いつく可能性が高そう。
EPSの成長率
最後にEPSの推移。

もう利益の動きとほとんど一緒なので特にこれといってありませんが、2019年度に増資を行いました。この時に米Paypalからも資金を調達しているみたい。
恐らく、それもあって今期Q2のカンファレンスコールにはPaypalをブラジル・アルゼンチン間で利用できるようになったと発表されてました。
増資を行ったので発行株式数は大きく増えました=発行株数が増えたのでEPS単位でのマイナス額は前期と比較するとちょっとだけ視覚的に良くみえてます。笑
気になるのは調達した資金の使い道ですが、元々そんなに財務的に困っている感じがしないので何かするのかな?とちょっと気になる…。
と、一瞬思いましたがよくよく考えたらコマース部門とフィンテック部門に分けて公表するようになったので、潤沢な運用資金が必要なフィンテック部門を強化していく方向性だという事はもう間違いないと思います。(Paypalからの増資もそうだよね)
今後も『EC』と『Fintech』という今後の世界の流れを汲んだ2本柱で引き続き事業の拡大を進めていくと改めて理解できました。
まとめ
さて、今回はメルカドリブレを調べてみましたがいかがだったでしょうか。
まだまだEC途上国で今急速に伸びている所をターゲットにビジネスを展開しているので伸びしろは抜群だと思います。
あとはどこまで成長するのか。今の株価はどの程度まで織り込んでいるのか。
という点ですがここは流通額やユーザー数と南米の人口等を比較しながら可能性を探っていかないといけないです。
(そこまで調べてません、すみません。でも結構他の人がその辺書いてくれてるからそっちを…笑)
それにビジネスの主戦場が南米という事で通常の業績とは別に「南米の安定しない為替」というのも影響してくるので将来を予想するのが難しいですね。
業績はほぼ間違いなく高成長が続くと思う反面、為替リスクは悪くなる可能性もあるし、良くなる可能性もあるので、それも考えて自身のリスク許容範囲と相談しながらPFに加えるのも面白い銘柄だと思います。
あ、唐突ですが…実は同社の数年前からの粗利率の低下について調べる前は
「(Amazonのように)メルカドリブレの直販部門が大きく成長したおかげで、手数料収入ではなく、EC小売の要素が強くなり粗利が低下」
と勝手に思ってたら実際は違いました。送料無料施策の影響でした。
思い込みは厳禁ですね、ちゃんと内容を見ないと…。笑
ただ「mercadolivre.com」(ECサイト)を見ると、生活必需品をはじめ出品者がメルカドリブレになっている商品も結構あるようなのでアマゾンのような感じで購入頻度が多い消耗品から直販も強化しているようにも思います。
割合についてはカンファレンスコールの質疑を見る限りマーケットプレイスの売上の10%以下ぐらいみたいですが…。
それともうひとつ。
ブラジルのフィンテックは同社もそうですが僕の保有株である【STNE】も含めて盛り上がっているみたいですのでリンク記事も一緒に…。笑
ちなみにストーンを調べた時に知ったのですがブラジルには
コロナバウチャー
とかいうブラジルの経済対策が行われているようでこれによってSTNEは業績に影響があったとしていますが同社に対しても(ブラジル市場は)影響あったのかな?
STNEの発表内容にはやたらこのワードが出てきましたが、メルカドリブレの資料や発表ではこのワードが出てないみたいなので情報が不確実ですが…どうなんだろうか。(確信がもてない独り言なので気にせずに…笑)
会社発表の資料等を翻訳しながら調べたので解釈を間違って理解している箇所やなんかおかしい所があるかもしれないので参考程度に見てください。
怪しい部分は直接、同社のHPに行って確認してもらえれば…。
※投資は自己責任です。あくまで参考程度にお願いします。