世界トップの半導体製造ファウンドリ企業 タイワン・セミコンダクター【TSM】

今回は半導体製造(ファウンドリ)の主要企業である
タイワン・セミコンダクター【TSM】
について調べてみました。
半導体と言えば僕は日本株のSUMCOに苦い汁を飲まされた経験があります。笑
あの頃は投資をはじめて数か月で半導体半導体!スーパーサイクル!と言われてた時期でしたが、今思えばあのタイミングでなんで勝負に出たのか自分でもわかりません。笑
その後はご存知の通り「スーパーサイクル」という名の半導体企業ロンガー達の幻想をやっぱり幻想のまま終わらせて今現在、半導体復活直前!?というような状況(だそうです…)
まぁそんな半導体業界ですが…
同社の主要顧客はあのアップルやNVIDIAなど、いわゆる製造工場をもたないファブレス企業に特に重宝されています。
そして半導体業界ではインテル、サムスンと並び
半導体ビッグ3
と言われるほどの世界的企業です。
半導体製造ファウンドリとしては世界トップの規模を誇ります。
米中摩擦の影響をモロに受けているファーウェイが同社の売上の内、約1割を占めると言われています。
その事からも今後の米中の方向性によっては、同社の業績にも影響が出てくる事は避けられなそうです…。
事業内容について
初めの方に書いていますが同社は
半導体製造ファウンドリ企業です。
「ファウンドリ」とはいわゆる下請け企業です。
「なんだ、ただの下請けじゃんか!」なんて思っていると業績を見てびっくりします。
世界中の有名企業がデザインした半導体を最先端技術と最高な設備を整えた台湾セミコンダクターの保有する工場で製造をします。
同社の設備投資費を見ていけば毎年多額の設備投資を続けている事がわかります。
これが何を意味するかというと資金(設備投資)面での参入障壁が高いという事です。
半導体企業だからと言ってインテル等のように自社工場を持っている企業ばかりではありません。
自社工場を持たないファブレス企業にとって同社のもつ設備は必要不可欠なものとなっているのが現状です。
その証拠に営業利益率はここ数年常に30%以上で推移しています。
これは同社の優位性を数字(業績)が裏付けたという事になるはずです。それと需要がしっかりあるという事。
例えば日本国内の下請け町工場のように大手に(死ぬほど)コストを詰められるような状況とは正反対です。
どんな有名企業でも使いたくなるような最先端技術と、多額な投資に支えられた魅力的な生産設備を保有している事が高利益を生み出す大きな要因となっているようです。
業績について
売上の成長率

まず売上を見ると前年を割っている年が過去10年間で一度もありません。
これは世界中でデジタル化が急速に進められた事で半導体の需要が常に膨らんでいたためです。
それが2017年頃から少し伸びが落ち込んできました。それでもマイナスにはなりませんね。
(※このぐらいの時期に私は「SUMCO」でやられていました。笑)
半導体の需要は景気と大きく関連してくるので正直コロナの影響があった今年以降は厳しくなるかもしれません。
ちなみに2019年度の世界半導体業界は前年比12%減と業界としては今は調整局面に入っています。(その中でも同社は前年比プラスを維持しています。)
特に同社の顧客は「スマホ」「コンピュータ」で売上の8割を占めています。
景気が悪くなるとどちらも影響を受けやすい市場なので同社の業績もそれに連動しやすくなります。
そういうわけで景気敏感株だという事が言えます。(※まぁ当たり前ですが。笑)
今年はスマホ市場の巨大柱、アップルが業績見通しを出せないという環境の中で同社の売上がどう推移するのか気になる所ですね。
あ、それに忘れちゃいけませんがファーウェイの影響もありますから…不安要因は多いですね。
が!
同社は「月次売上高」を発表しています。
その資料によると今のところ1~5月まで全ての月で前年比プラスを達成しています。もっと言うと2020年のトータルだと前年比プラス30%超えと驚異的な伸びを記録中です。
なのに今年3月中旬にIDCから発表された内容によると、世界の半導体市場は当初(コロナ感染拡大前)は約6%ほど成長する見通しだったようですが、コロナの影響で今年の半導体市場は約6%のマイナス成長になると下方修正されたようです。
という事は、ここまでとても好調に見える同社の業績が影響を受けるのはまだ先??
同社の収益性

収益面を見ると、「利益率」と「売上の成長率」に相関関係があるように思います。
売上成長率が高くなる時は利益率も比較的高くなり、売上の成長率が1桁台に鈍化した時は利益率も悪くなる
という関係性のようです。
売上が動こうとも利益率はブレないのが理想ですが、
景気調整時期の半導体業界ではそんなわけにはいかず、需要が弱くなる事で設備の稼働効率性悪化、単価の下落等の理由により売上成長の鈍化はそのまま利益の悪化に直結する関係にあるようです。
という事は逆に景気が底入れした後の反発は売上・利益ともに反発する事になるからその時に受けられる恩恵はそれなりにあります。
ただし景気敏感株である以上、株価の面で言うとそういう事も考慮され「一般的に言う割安な水準」で株価が放置されやすいので、長期保有で大きなリターンを目指すというよりは景気の転換期を狙って数年単位で売買するのが良いのかもしれません。
…と言いつつ、これまでの過去10年の株価を見ると5倍程度にはなっているので、そうとも言い切れない??笑
キャッシュフローの推移

キャッシュフローですが、営業CFは基本的には右肩上がりで成長しているので特に問題なさそうです。
気になるのがFCFが2015年で一旦、頭打ちになっている事。
FCF減っちゃったか~。と一瞬思ってしまいますが、この減っちゃったと言われる分がどこに行っているのかを考えるのが大事です。
本業で稼いだお金は半分以上、いや約7割以上が「設備投資」につぎ込まれています。
初めの方でも軽く言いましたが、同社の利益率の高さの基礎にあるものは「技術力」と「設備」です。
という事は利益率を高水準で維持するためにはその2点に投資し続けなければいけません。
なのでその稼いだお金は「固定資産」となり、それに伴って減価償却費も大きくなります。
そうすると結果的に
会計上の利益額以上に営業CFが積み上がりやすい状況になります。
で、その積み上がりやすくなった営業CFを更に投資に回すという、それをループさせて規模を大きくしてきた企業ですね。
株主還元は?
設備に優先してキャッシュを回しているので
いわゆる株主還元(配当や自社株買い)はどうなってる?
まず配当利回りについては比較的高水準な3%台です。(2020.6.22現在)
それと自社株買いはほとんどしません。
そして、配当性向は70%を越えます。
ですが、実際に設備投資費を差し引いて残ったFCFから配当金総額を更に差し引くと配当性向は100%を越えます。
そう考えると、
設備投資をしながら自社株買いはしないにしても配当金を利回り3%出していると考えたら表面的な数字には表れませんが株主還元は結構高い方だと感じています。
(※稼いだお金以上の額を設備投資と配当に回しているので…。)
そもそも設備投資に回すお金は一般的には株主還元とは言いません。けどそれで実際に拡大しているので最終的に周り周って利益という形で株主に還元されます。という事は実質、株主は嬉しい…=株主還元じゃないか!と。
まぁどう考えるかは個人個人で。笑
もっとも、この業種で設備投資がなくなる事はないので、配当金狙いの銘柄としては将来的に減配の可能性は低くはない(※設備投資優先がベース)ので、そこまで魅力的ではないかもしれませんね。
EPSの成長率

そして最後にEPS。
自社株買いがほぼないので、業績の推移とほとんど一致します。
そして、半導体市場ごと丸々株価としてはこれまで上昇してきてますので、同社だから株価の面で特に強いというわけではなさそうです。
↓SOX指数と比較してます。(一応、黄色はS&P500)

なのでタイワン・セミコンダクターは非常に魅力的で他社を突き放しているかのように思えますが株価の面では結局、半導体市況に連動するし(当たり前)…半導体に投資するなら絶対に同社株が良い!とは思えない結果となりました。
まとめ
以上、まとめてみましたがいかがでしょうか。
まとめの前にもう書いてしまいましたが
半導体に投資したいなら、別にこの企業じゃなくても良い!(※これまでを見ると)
という結果になってしまいました。
まぁ半導体の未来が今後も絶対明るいと思えるのであれば、SOX指数に連動するETFでいいんじゃないか、と思います。簡単だしね。
でもでも!利益率は30%超えの優良企業です。
何度も書いてますが業界内でも優位性が高いから、これだけの利益率を残す事ができるという事は間違いないです。
そしてその裏付けは「設備投資」です。
なおかつ、その設備投資の規模は「設備投資できるキャッシュを稼げてる」という裏付けにもなります。
※ただし、景気後退期には売上・利益ともに下がることもお忘れなく!
良い企業なんですけどね。
でもやっぱり景気敏感株と言われるセクターの長期投資は色々タイミングがあるので、難しいなぁと感じました。
※投資は自己責任です。あくまで参考程度にお願いします。