
科学機器・試薬サービスの世界的企業 サーモフィッシャーサイエンティフィック
今回は
Thermo Fisher Scientific【TMO】
(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
について調べてみました。
…ところで『サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック』は、そもそも何をしている企業なのでしょうか。名前からではまったく想像がつきません。
始める前にざ~っと見てみたところ、医薬品やバイオ薬開発などの研究用機器や試薬等を提供する企業のようです。
事業内容
同社の行っているビジネスについて、もう少し詳しく見ていく事にします。
まずセグメントで見ると、
Biosciences(バイオサイエンス)
Genetic Sciences(遺伝子化学)
Clinical Next-Generation Sequence(次世代シークエンス)
BioProduction(バイオ生産)
Chromatography and Mass Spectrometry(クロマトグラフィー??と質量分析)
Chemical Analysis(科学分析)
Materials and Structural Analysis(材料&構造解析)
Clinical Diagnostics(臨床診断)
ImmunoDiagnostics(免疫診断)
Microbiology(微生物学)
Transplant Diagnostics(移植診断)
Laboratory Products(ラボ製品)
Laboratory Chemicals(実験用薬品)
Pharma Services(医薬品サービス)
と大きく4つのセグメントに分けて、医療・研究関連全般をほとんどカバーできてる?というぐらい広いラインナップをもっています。
ん~…むずかしいですね・・・。
この翻訳で合っているかどうかも定かではありません。笑(多分、大まかにはあってるはず。。。!)

売上の規模で構成比を出してみるとこのような割合になります。
2019年時点では『ラボ製品&サービス』セグメントが一番規模が大きいようです。(※現在も過去も同社の4~5割はこのセグメントが占めています。)
余談ですが…2019年度では全体の25%を占める『ライフサイエンスソリューション』セグメントは2013年頃までは全体の約5%程度しかありませんでした。
その後、2014年に「Life Technologies」社を買収した事でこのセグメントが大きく成長し同社の4分の1を占めるまでに拡大しました。
という流れでここまで来ました。
他のブロガーの方が書かれているので既にご存知だと思いますが『買収で拡大してきた企業』だというのが多くの投資家の見方のようです。

また、同社のビジネスを超簡単に表す場合、
上記の3つのグラフから図ると
製薬・バイオ市場を主要ターゲットに置いて米国を筆頭に世界中で事業を展開。
販売商品の半数は消耗品が占めるので比較的安定した売上をキープしつつ拡大していっているイメージ
ということになりますね。
で、その拡大を引っ張っているのが「買収」というわけです。
業績について
と、なんとな~く雰囲気だけつかめた所で業績を確認します。
もっと詳しく知りたい!と言う方は、米国株投資家の見方である「アメリカ部」様のブログよりどうぞ。笑
事業についてめちゃくちゃ詳しく書いてますのですごく参考になります。
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売上の成長率
では、まずは売上の推移から。

基本的には連続増収で拡大しています。
売上が大きく成長した2014年については最初の方に書いていますがライフテクノロジーズ社の買収により急拡大しました。
ここでは『サーモフィッシャー社の買収と増収の関係』をさーっと書いていきます。
・2016年は「FEI」「Affymetrix」等の買収。この年に伸びた売上分の約半分(4%程度)が買収による増収効果。
・2017年は「Patheon」等の買収。買収による増収効果は14.5%の内、およそ9%と増収額の半分以上で買収が貢献。
・2018年は「bolt-on」等の買収。この年も買収による増収効果は約7%とやはり増収額の半分程度を占める。
・2019年は「Brammer Bio」等を買収。この年は買収による増収は1%程度であり、全体の売上の成長率も鈍化した結果となりました。
要は買収がなければ年間3~5%程度のオーガニックな成長という事になります。
同社にとっての成長の秘訣はかなり大きな割合でM&Aに頼っているのがわかります。
それでも売上はしっかり成長していますから全然悪いことではないですが。
同社の収益性
上記で説明したように買収を繰り返して成長している同社ですが、一般的に買収した事によって一時的に利益面に悪影響が出る事が多々あります。
同社の場合はどうでしょうか。

ご覧の通り2014年の大型買収前の営業利益率は12%程度でした。
その後も買収を重ね続け現在はなんと利益率18%と大きく改善しています。
この結果は買収による拡大路線が成功している、という大きな裏付けとなると思います。
売上が拡大しても利益面で悪影響が出てたら効率的な買収とは言えません。
その点でいくと同社の度重なる買収は良い方向に進んでいると言って良いと思います。
ちなみに、2019年度の利益率が急改善された要因は「ライフサイエンス」セグメントで約3%の利益率の改善があったのもありますが
大きく影響したのは「Anatomical Pathologyビジネス」の売却益
なので会計的には営業利益の改善となりましたが、恐らく2019年度だけの一時的なものなので2020年度以降は恐らく15%前後に戻ると思います。
キャッシュフローの推移
さて、次にキャッシュフローを確認します。

とても順調に伸びていってますね。
医薬品やバイオメーカーは研究開発費が結構かかるからキャッシュが溜まりにくいというイメージがありますが
同社の場合は開発の手助けをする製品を提供する側なので思っているほど設備投資費用が膨らまないみたいですね。
その代わり?稼いだキャッシュは買収費用に変わります。
その買収によって売上・利益ともに成長しているので「会社が回す投資」という面ではかなり魅力的です。
配当とかで(税金抜かれて)株主に返したり、自社株買いで実質利益額変わらなくてEPSを引き上げるだけの企業とは違い、基礎になる業績の成長を買収によって支えています。
僕的には結構好きな分類の拡大路線です。笑
EPSの成長率
次にEPSの推移です。

こちらもちゃんと成長しています。
利益が成長しているからもちろんですが、それとは別に実は配当と自社株買いもちゃっかり行ってます。!?
そのおかげもあり2012年から比較すると約3倍に成長しました。
買収で業績を成長させる一方で、配当と自社株買いでも微力ながら株主還元に努めている、と。
投資家としては非常に好感が持てる資金の使い方をしてくれているのではないでしょうか。
まとめ
というわけで、いかがだったでしょうか。
一応、ヘルスケアセクターの企業にはなりますが、ちょっとだけ違うのがわかったと思います。
ヘルスケアセクターの中では比較的安定している業態になると思うので、おすすめですね。
ただし買収が同社の成長エンジンなので、買収が上手くいかなくなった時は再度思案が必要になるかもしれません。
それと
これまでの成長率等を考慮して株価を見た時に割高とまではいかないにして現在の株価(2020.6.16時点)はちょっとだけ高水準な気がします。
もちろん今後も買収によって業績拡大が恐らくまだ続くと思うので、長期で見れば大丈夫だとは思いますが将来どうなるかは誰にもわかりません。
特に2019年のEPSを目安に株価と照らし合わせる場合は利益率にして約2%程度の大きな一時的収益があった事をお忘れなく!(※それを除いたら、実は2019年度はあまり成長していない。)
それでも、安定した良い企業なのは間違いないです。
暴落時には是非拾っておきたい銘柄のひとつになりました。
※投資は自己責任です。あくまで参考程度にお願いします。