
クリエイターご用達の世界企業 Adobe
今回は、「Photoshop」や「Illustrator」など世界中で使われているソフトを提供している米国企業
Adobe(アドビシステムズ) 【ADBE】
について調べてみました。
事業内容
アドビと言えば、思い浮かぶのはやっぱり画像編集ソフトが有名です。
世界中のクリエイターのみならず、一般の方でも同社の製品は広く使われています。
以前はソフトを購入して端末にインストールという(昔で言う)一般的な使い方で提供していましたが、現在は同社の柱である『Adobe Creative Cloud』いわゆる、サブスク型に移行してサービスを提供しています。
アドビは、製品・サービスのサブスク化を(※オラクルやIBM等と違い…)他の企業と比較しても非常にスムーズに移行することに成功した企業のひとつです。
そのおかげもあり、ここ数年の株価はS&P500平均を大きく引き離して成長する事になりました。
と、画像編集ソフトの会社というイメージが世間では強いと思いますが、実際はどんな感じなのでしょうか?
同社のセグメント別の売上は2019年度はこのような内容でした。

この「Digital Media」の部分が画像編集ソフト等の製品・サービスが分類される箇所で売上の7割程度を占めています。
ですが、こうやって見てみると「Digital Experience」もここ数年は年間30%程度の成長率を叩き出しています。
このセグメントは、「Adobe Experience Cloud」を主軸として『企業のデジタル変革をサポートするビジネス』を展開しているようです。
顧客管理システムの提供や、広告管理の簡素化やプラットフォームを提供したりと、かなり広い範囲を囲ってビジネスを進めている印象です。
2018年に買収した「Marketo(マルケト)」も、この分野をサポートする企業です。
買収当時、大型買収と報道されましたし、アドビの次の一手は「Digital Experience」を成長させていく流れになっているようです。
かなりざっくりですが事業内容はこんな感じで、次は業績を見ていきます。
業績について
売上の成長率
初めに売上の推移について見てみましょう。

ご覧の通り時価総額が2,000億ドルもある企業にも関わらず売上成長率はここ数年は20%を超える脅威の成長率を記録しています。
時価総額2,000億ドルの規模というと、他には米国株投資家が大好きな「マクドナルド」と同じぐらいの規模。
その規模で年間の売上成長率が20%超えです。
(※ちなみにさらに強烈に成長している「ネットフリックス」もだいたい同じぐらいの時価総額ですね。笑)
まぁ、成長率と時価総額はそんな関係ないですけどね。
ただ言える事は「成長中の時価総額2,000億ドル企業」という事です。
とは言っても大きく再成長し始めたのは2015年。きっかけは何だったのでしょうか?
サブスクの収益が2015年度は32億ドルとなり前年比で+55%と大きく伸ばしたことが要因みたいです。
簡単に言うと、『Adobe Creative Cloud』(「SaaS」)への移行や新規の顧客取り込みがとても順調にいったから、という事になります。
その後も成長スピードを落とす事なく平均して年間20%程度の成長を続けています。
ちなみに2020.Q1の売上の前年比は+19%ほどで、若干鈍化してきたとも見れますが今四半期はコロナをはじめ、外部要因の影響度が強いので次回以降の数字が気になります。
同社の収益性
そして次は収益性についてです。

営業利益率がここ数年は平均して30%程度あります。
サブスク化への移行期間中は費用が先行して利益はガクッと下がりましたが、環境が整い始めた2015年度からは徐々に回復していって現在では
サブスク化前と比較して約3%も営業利益率が改善しました。
売上も20~30%成長していた事も考えると、利益率を改善させながら売上も急激に伸ばす。というなかなか見ないケースで伸ばし続けました。
これが、「アドビのサブスク化は成功した。」と言われる所以ですね。
これだけ高い利益率を維持できているのは、画像編集ソフトの雄としての地位をガッチリ固めているのが大きいです。
他に競合になりそうなサービスはほぼ思いつかないので市場の優位性もかなり高い位置にあるはずです。
キャッシュフローの推移
こちらも、同じく2015年を境に会社が変わったように急激に伸びてますね。
えぐいっすねぇ…

ここのポイントは2つですね。
①利益と比例してキャッシュもしっかり稼げてる。
②設備投資がほぼないのでFCFがほとんど変わらない。
です。
①については当たり前のようですが、製品を製造する会社であれば会計上の利益は出ても在庫が増えたりする事でキャッシュが残らない事や、逆に先行投資の負担(減価償却費等)が重かったりするとお金は手元にあるけど会計上の利益は少ない。という状況になる会社も多くあります。
同社は稼いだ分以上(主に減価償却と株式報酬費用がプラスに貢献)にしっかりキャッシュが手元に入ってきているので、資金面でも余裕があり次の戦略に移る際に投資に流せる資金が潤沢にあるという事にもなります。
そして②。
こちらは元々がソフトを提供する会社なので設備投資はそもそも大きくないのですが、サービスをサブスク化した事によって更にキャッシュが貯まりやすい構造になりました。
キャッシュが貯まりやすいとどうなるか?
企業の利益成長とは別に、株価の成長を加速させる大きな要因のひとつ『株主還元』を充実させることにもつながってきます。
株主還元率
というわけで、「株主還元率」を見てみましょう。

まず、上記グラフは「配当と自社株買いを合わせた株主還元率」ですがアドビは配当金は出していません。
株主還元の方法は今のところ「自社株買い」のみで行われています。
配当目当ての方は「現時点では対象外」かもしれませんが、キャッシュが貯まりやすい構造の企業は一旦、配当金を出し始めると原資があるので安心して長期で持てます。
配当も全然出せるけど今は自社株買いをしているだけ。という事ですね。
ちなみにイメージとしては、稼いだキャッシュの約半分程度を自社株買いに回しているような感じです。

というわけで純粋に利益の成長に加え、上記の自社株買いが更にEPSを押し上げています。
そのおかげもありEPSの成長率もここ最近は絶好調でした。
※とは言っても自社株買いによるEPSの貢献は+0.5~1%程度なので基本は業績の成長がEPSの成長を支えています。
2019年になって成長率は15%となっていますが、これまで(2015~2018年)が凄まじかっただけで、全然悪くありません。
2020年度も、恐らくEPSは成長を続けるのではないか、と思っています。
その他
FY2018期間にのれんが100億ドルに達しました。
これについては2018年11月に「Marketo(マルケト)」を約50億ドルで買収した事が要因です。
マルケトが加わった事によってアドビの「デジタルエクスペリエンス」セグメントののれんが同社の約7割を占める事になりました。
これは今後の狙いが「デジタルエクスペリエンス」を今後の最重要課題として事業を進めていく方針とも取れるように思います。
まとめ
今回は僕も仕事で使っているソフト(フォトショ、イラレ)を提供しているAdobeについて調べてみましたが、いかがだったでしょうか。
僕としては、『めちゃくちゃ状態の良い会社やんけ!』という感じです。
まぁ業績を見ればそれはわかるので市場の評価も高く現時点のPERは約60倍程度あります。
平均と比較すると割高に見えますが、
これまでの成長スピードを考慮すると、そこまでべらぼうに高いというわけでもない。
ように感じます。
その裏付けとして一番直近の決算2020.Q1の数字を見ると、
売上は前年比で+19%ほどですが税引前利益は前年比+30%とまだまだ高水準の成長を維持しています。
今期はコロナの影響もあり、最終的にどっちに転ぶかは定かではありませんがQ1と同じペースで成長を続けるのであれば3年程度で(一般的な考えで)適正なPERになると思うので、先の成長を見越して株価は動く事を考えると、株価はまだまだ上がっていくと想定しています。
まぁでも、期待が高いだけに今、力を入れている「Adobe Experience Cloud」がこけた時はそれなりにダメージを受けるかもしれませんが…。
それでもやっぱり、どこから見てもめちゃくちゃ優秀な会社です。
何かの間違いで株価が下がった時は「買い」で問題なさそう。
※投資は自己責任です。あくまで参考程度にお願いします。