
昨年、巨額の減損損失を計上したクラフトハインツ
今回は、昨年、大規模な減損損失を計上した
クラフトハインツ【KHC】
について減損計上後の財務状況や業績がどのように変化したのかを調べてみました。
クラフトハインツは米国で非常に知名度の高い食品ブランドを多数、展開している米国企業です。
同社のビジネスや企業統合等については多くの方がまとめていますので私の方では割愛します。
セクター分野でいうと「生活必需品」セクターに分類されるので一般的には比較的不況に強いとされています。
バフェット銘柄という事で人気もありますが3年前の高値から約3分の1まで株価は下落しました。
最後の一押しでは巨額な減損、減配、不正会計等を発表して現在は30ドル付近をうろうろしている状態です。
指標でみると割安と見れますが、業績も年々減少しており大幅減配とあっては、こうなるのも仕方ないですね。その面では決して割安だとは言い切れないです。
過去5年間の業績について
それではさっそくですが、まずは過去の業績についてみていきます。
売上と売上成長率

売上の推移を見ていくと成長が止まってるというか、FY16までは売上は微減となっており、FY17から一旦は売上減少が底打ってきたかなぁと思いかけていたら、上の方で書いたような問題が発生しました。
一応、生活必需品セクターという事なので不況に強いとされていますが毎年5%も下がっていたら景気に関係なく株主は不安になりますね。
およそ7割の売上が米国内での売上ですので新規事業や買収等がないとここからのさらなる成長は難しいように思います。
もしくは、ウエイトの少ない米国外での事業拡大が課題に思えますが、同社は昨年有利子負債比率を引き下げるため、昨年海外事業を一部売却しました。
それによって海外事業の拡大は一歩後退という事になったと感じています。
利益面について
次に利益面について見ていきます。

これは意外だったのですが利益率はなんと改善しています。
巨額の減損があったFY18はとりあえず置いておいて。。。FY17では営業利益率は23%と高収益です。
金額ベースでも増えているので、売上の減少を帳消しする勢いで利益が改善されている事になります。
減損するような企業なのに、そんな事あるのか。。。という感じでしたので過去の業績を振り返ってみます。
気になるのが急改善したFY16ですね。急に5ポイントも利益率があがってますからね。
あぁ、、、なんか数字合わないなぁと思ってたら、
不正会計分は2016年から修正されていたんでしたね。
改善したわけではないです。
まぁそれでも、営業利益が20%台であれば収益面は全然問題ないレベルです。
ちなみに、こちらも地域別に利益率を見てみると、米国・カナダ・EMEAはほぼ同じ利益率となっています。
全体の売上の1割程度を占める「それ以外の地域」では上記の3地域と比べると利益率が10ポイントほど元々低いですが分母が小さいので企業全体で見るとそこまで影響は多くありません。
EMEA地域は恐らくほとんど北の方(ヨーロッパ周辺)の売上なんだろうと思いますが、人口増加が進んでいるアフリカエリアでシェアを伸ばせるようになれば今後の業績に寄与しそうです。
減損計上後のFY19の業績は?
地域別にみる売上の変化
FY19もQ3まで終わりましたが地域別に見ると
・カナダ:△9.5%
・EMEA:△8.1%
・その他地域:△15.7%
と全ての地域で売上は減少しました。
一番売上の大きい米国の減少率は1.8%と他地域と比較すると軽かったですが、会社全体で見ると4~5%の売上減で推移しています。
先ほども書きましたが、米国以外で売上が減少しているとなると将来的な成長は期待薄といった感じです。
しかし米国外エリアでの業績内容を見てみると、またちょっと状況は異なるようです。
減少幅の大きいカナダはナチュラルチーズ事業売却によるマイナス影響が大きく、EMEA、その他地域でのマイナスの大半は為替の影響(※一部はインドでの製品ブランド売却)によるものです。
そう見ると、資産の売却(米国外事業の売却)や為替の影響で米国外の売上が大きく落ち込んでいるものの、それを除くと売上の前年比は△1.5~2%程度の減少しかないようです。(10-Qに記載)
「~しかないようです。」と言っても売上は減少してますので全然安心はできませんけどね。
また、利益面を見てみても
FY19.Q3四半期から減損損失の影響がなくなりました。
1~3Qまでの減損の影響を除いたSQ&Aも前年よりは1ポイントは悪化しましたがそれでも売上に対して13%です。(前年は12%)
このことからも減損損失の影響を除けば既存事業への悪影響は今のところ、ほぼないように思います。
減損損失が与える今後の影響は?
あれだけの減損損失を計上しておいて、影響は一時的なわけあるか!という声の方が大きいでしょう。笑
実際にそれが原因で株価が大暴落しましたから、恐らくそうなんでしょう。
じゃ、今回の減損損失がどうやって今後の業績に影響を与えるのか?というのがわからなかったので順を追ってまとめてみました。
前回、減損を計上したのは
ステーキソース「A1」や「クラフト」「オスカー・マイヤー」等の食品ブランドの評価を引き下げた事について、総額でおよそ150億ドル規模の減損損失を計上しました。
そもそも、無形固定資産やのれん代の減損って、一旦損失として計上してしまえばその後に悪影響ないんじゃないの?
元々形がないものなのに、その後の業績に継続的な悪影響及ぼすものなの?結局は一時的な費用でしょう?
と私は思っていました。
減損の本当の怖さがわからなかったので少し調べてみました。
まず、のれんの減価償却は日本会計基準では可能とされていますが米国会計基準ではのれんは償却できず減損によって、のれん額を減らす事ができるようです。
決算期末等に買収した企業の収益力を再計算する「減損テスト」というものを行っているようでその時に買収した企業の収益力が大きく下がった時に一括でのれんを減損する事になっている。
要するに、
「投資(買収費用)した分が、回収できない」
と判断された時という事ですね。
それで、改めて適正だと思われる額までの差額を費用として「減損損失」で計上します。
「減損をしたから今後の業績が悪くなる」
というよりも
「業績が悪くなったから減損しないといけない」
という事のようです。
順序で言うと
業績悪化→資産・のれんの減損
となります。
要するに
クラフトハインツの(減損の対象となった製品やサービス等)業績が無形固定資産・のれん代の減損をしないといけないほど悪化している。
という事になるのでしょうか。
私は減損損失というのは「結果論」だと思ってます。そしてその結果に合わせて今回、減損を計上しました。
減損の対象となった製品やサービスが今後も業績を落としてくるとまた減損の対象となる可能性はありますが一旦、これで仕切り直しという風にも捉える事ができると思います。
「ブランド価値の低下」というのは同社のような企業にとっては結構ダメージが大きいのかもしれませんが。
それと個人的な考えですが、確かにハインツの食料品は人気・定番なのかもしれませんがブランドと言っても今の時代、ほぼ全製品、代替効くしなぁ。。。
という感じがしないでもないです。
それでも今期も、(減損を除いた)営業利益が20%を超えているという所を見ると、本国ではやっぱり同社のブランドって強いんだろうな~とも思います。
どっちつかずですみません…
まとめ
まぁそれは置いておいて、上の方にも書きましたが
現時点では今期の業績も資産売却・為替の影響を除いて売上減少率が△1.5%程度なのでそこまで悲観的にならなくても良いような気はします。
今期については今でこそEPSはQ3までで1.44ドルですが、通期で見ると2.0~2.3ドルぐらいにはなるでしょうか。
同社は前年まではNonGAAP EPSでEPSは3.5ドル程度はありました。
ここ数年はEPSがなかなか安定していない事もあるので正確なEPSを出すのが難しいですが、FY17年の税制面とFY18の減損は除く、「Integration and restructuring expenses」は毎年計上されるので一旦含んで考えると、
FY16:2.74ドル
FY17:3.26ドル
FY18:3.19ドル
FY19:(約)2.70ドル (FY19.Q3までで2.09ドル)
ぐらいにはなるんじゃないかと勝手な見方で想定してます。
それで今の株価が約30.5ドルだとします。
上記の改良したEPSを基にざっくり計算するとPERは11.3倍
配当金は四半期ごとに0.4ドル(年間1.6ドル)で試算してみると利回り5.2%ぐらいですね。
配当性向を出すと約60%ぐらいになります。
ん~…、現時点であればあんまり悪くない条件に思います。
株価が急落した要因のひとつに36%の減配というのがかなりインパクトがありましたね。
この会社を買うのは恐らく高配当好きな方でしょうから、これは嫌われます。笑
正直な所、直接的には(←※ここ大事)一時的な費用が発生したわけですが減配しないといけないほど稼ぐ力が悪化したようには感じません。
営業キャッシュフローもそんなに変わってませんし。

業績悪化が徐々に進んでいるような気はしないでもないですが、恐らくこの程度で減配をしてしまう企業という見方で売られてしまったというのもあるのかもしれません。
今ぐらいの状態なら、インカム、キャピタルどちら狙いでもいけるんじゃないかなぁと感じてます。
超長期で保有するのが正解かどうかは別ですが!
クラフトハインツの見方は結構賛否が分かれると思いますがあくまで私個人的な考えですので参考程度に思ってください。
(※ちなみに記事執筆段階では私は同社の株は保有していないので客観的に見てます。)
このブログ記事ですが1月24日の夕方に下書きが終わり、1月25日に仕上げをしてアップしています。
その間、要するに1月24日の夜、クラフトハインツを少しだけ買いました。笑
↓↓↓↓
ですが、0.01ドルでも再減配したら速攻で損切りします!
そして、事業・企業買収で今後業績を拡大させるつもりがないと判断しても速攻で売ります!
(前回の)減配するって事は、他に資金の使い道を回すためにしたんだと私は勝手に都合の良いように思ってます。(※昨年の資産売却(海外事業の売却)は一時的な措置ですよね?え、違う?)
新たにもっと効率の良い事業を買収するために今回、有利子負債比率を引き下げ、事業PFの仕切り直しのための売却だったんだと信じてます。(信じてないけど…)
ちなみに、同社株で迷っている場合は、けだまさんのこちらの記事がとっても参考になります。
「クラフトハインツ買う前に読んでおけばよかった…」とか思ったり、思わなかったり…。笑
けだまさんの記事を読んでも欲しいと思った方は、もう最初から買うと判断してる方ですね。
大体の人はこの記事読んだら、クラフトハインツよりも良い銘柄あるかも、と感じるんじゃないかなぁ。
それでも私は今回買ってしまいましたので、上で書いたような
『再減配速攻売り投資法』!!
で対処していこうと思っています。
※投資は自己責任です。あくまで参考程度にお願いします。