
渦中のボーイング機がまた墜落
米国がイランへのミサイルでの空爆を行った数時間後またもやボーイングの航空機が墜落事故を起こしました。
当初は「ボーイングの技術的な問題」だとイラン側は発表し一時は「ボーイングおわた・・・」と思った方も多いのではないでしょうか。
ですがその後、発表された最新の情報(米国側からの発表)によると
イラン側が航空機をミサイル攻撃だと誤認して撃墜した可能性が高いという情報が発表されました。
あくまでどちらも可能性の話であって、現在はまだ調査中という事になっていますね。
今回も感じたのですがやっぱり『情報の出どころ』ってめちゃくちゃ大事ですよね。(※今回の件に限らず米中関係の話題でもそうですが)
正直言うと、疑いの目を持たなかったら特に日本人なんて
「国や大手メディアがあんなに堂々と言っているのだから、間違っているはずがない!」
と思いがちな気がします。
ある程度大人になってくると「あれ、おかしいな」と感じれる人もいますが、何も疑問を持たず生きている人は思いのほか情報を信じ切っている人が多い気がします。
『情報の出どころってほんと大事です!』(再度!)
話が逸れてしまったので、戻しますね。すみません。
今回の場合も米国の方が国の規模や世間的な評価から言って、正確な事を言っている感覚がありますが、それも本当かわからないですよね。
イランの情報の方が正しいという可能性もあるかもしれませんし。
でも今回の場合は
②(米国発信の情報で)飛行機墜落直前にイランから2発のミサイルが発射されている
という状況から見ると、米国の言っている情報の方が正しい可能性が高そうです。
今回墜落したのは737MAXシリーズではない。
さすがに墜落事故が相次いでいたボーイングにとって今回もボーイング側の責任だった場合、結構ヤバめの死活問題になるはずです。
こんな状況ではボーイングの飛行機を購入する顧客もそうですがボーイング機に乗る乗客も安心して乗る事はできませんよね。
ボーイング機を保有する事によってお客さんが乗ってくれなくなるのであればボーイング機は航空会社から排除の流れになっていく可能性だってあります。
株価を見ると墜落事故の影響によると思われる株価への影響は330ドルあたりで、今のところ底になりそうな状況が続いています。
今回の墜落事故の初動でまた大きく下げるかと思われましたが、そこまで下げませんでした。株主の皆さんは発表の段階でイランが関係している可能性が高いという点を考慮していたのかもしれませんね。
ですがもしも今回の墜落がボーイング側の問題だった場合、300ドルを下回る勢いでじわじわとまた下げてくるかもしれません。
これまで問題になっていたボーイング機は「737MAX8」という最新機であり、今回墜落したウクライナ機は「737-800」型(※でも737MAX8の前期型」であり機体としては別の種類にあたります。
そもそも過去2度の墜落の原因となったと見られているのはMAXシリーズから追加されたシステムである「MCAS」というシステムではないかと言われており、MAXシリーズではない737-800型は、また別と考えていいと思います。
だから、今回のウクライナ機の墜落がボーイング側の責任だった場合、不安視されていた「737MAX」シリーズだけでなくボーイング機全てに向けて不信感が急速に広がる事になります。
こうなると企業にとっては最悪パターンですね。
墜落事故による財務面への影響
ボーイング社については以前、業績等をまとめた事がありますが、今回は墜落事故が今後どのように業績に影響してきそうなのか調べてみようと思います。
WSJの情報によると
米紙ウォールストリート・ジャーナルは6日、ボーイングは昨年9月末時点で約200億ドル(約2兆1700億円)の手元資金を持っていたが、MAX問題に絡むコストがかさみ、それが同社に追加借り入れの検討を促したと報じた。
Bloombergより引用
米規制当局がMAXを操縦するパイロットにシミュレーター訓練の完了を義務付けることを検討しており、同社の支出は2020年上半期に150億ドルを超える可能性があり、その一部を賄うため最大50億ドルを追加調達する見通しという。
とあるように、
墜落事故の補償やそれに関連する費用が想定を上回る見込みであり追加の借り入れが必要かもしれない、という状況のようです。
当初の補償費用は約50億ドル程度(※年内に運航できた場合)と見積もっていたボーイング社でしたが影響が長引いており大きく上回る補償額となりそうです。
ボーイング社は米国唯一の民間航空機の開発製造企業という事もあってなくなると米国にとっても非常に困る企業なので、このまま企業がなくなるという事はありえないと思いますが業績の回復には思いのほか時間がかかるかもしれませんね。
そうなると株価については今は300ドル以上で推移していますが、このままもう少しダラダラ下がるような気がします。
ボーイング737MAXの運航が再開されれば業績も元通りとはいかずともある程度戻るとは思いますが、そこに行き着くまでの道のりは非常に不透明です。
同社の2018年度の業績を見ると
・営業キャッシュフローは約150億ドル
・フリーキャッシュフローは約130億ドル
となっており、ここ数年はその年に稼いだキャッシュとほぼ同額を配当金と自社株買いによって株主へ還元してきました。
補償費用が150億ドルとなると業績絶好調時の2018年に稼いだキャッシュ丸々なくなるイメージです。1年でペイできるなら大丈夫なんじゃないの?と思いそうですが
2019年度会計期間が既に9ヵ月を終わっての同社の現段階の業績は
・純損益:3.7億ドル(前期は70億ドル)
・EPS:0.66ドル(前期は11.95ドル)
となっており、737型関連の費用がかさみ利益がほとんど出ない状況となっています。737型の納品や製造が再開されるまでは、多少改善はするものの、このような状況が続くように思います。
同社の魅力のひとつであった自社株買いはもちろん行われないでしょうし配当についてもこのまま継続できるのか疑問です。
増配はないでしょうし良くて据え置き、長期的(3~5年以上)に響くと判断されたらもしかしたら減配の可能性もあるかもしれません。
さらに長期の借入額が2019年Q3時点で既に200億ドルまで増え、これまで100億ドル程度だったのが倍増しました。
想定の難しい補償費用の影響もあり、資金繰りも不透明な状況になっているようです。
今後の返済に充てる資金も必要ですし借入金に対する利息も増えると思われるため、今後は利息分だけでもこれまでよりも4~5億ドルの負担増になりそうです。
さらに航空会社への補償は複数年に渡り行われるようなので、再開したからといってすぐに業績が元通りになるというわけではありません。
長期的に費用がかかってしまうほどの大事だと思っておいた方が良いです。
結局、業績は元通りになるのか。
正直に言うと、わかりませんでした。
というのも当初の予定通りに昨年内に737MAXが運航再開されていれば、それによって業績がどうなった、補償額がどうなった、資金繰りはどうなった、というのが少しでも明白になればどうにも結論が出せたかもしれませんが、現状は
737MAX墜落事故による補償金額・再開目途はいまだ見通しが立たず、ウクライナ機墜落による新たなリスクが出来、業績・財務面への影響も当初の想定よりも結構深刻。
という状況だという事はわかりました。
それでいて今の株価が330ドルあたりで、2018年のEPSでPERを試算すると約20倍前後。
業績が元に戻れば、寡占市場である同社の場合、程よい数値、もしくはちょっと割安ぐらいのレベルだと思いますが、元通りになるには多分3~5年はかかるんじゃないかなぁと今の段階では思います。
737MAXの運航再開、もしくは補償金額がある程度目途がつく。
等の確かな情報が出た後に同社株の保有を考えているのであれば検討しても遅くないと思います。
元通りまで3~5年かかる可能性があるボーイング社で迷うぐらいなら他にもっと期待できる企業は米国にはたくさんあるので今はそっちを優先した方がいいかもです。私はそう感じました。
万が一、株価がさらにドスンと下がるような状況になれば買ってもいいと思いますが、ドスンと下がるような悪材料が出ているという事にもなるので、その時はその時でしっかり調べないと危なそうですね。
※投資は自己責任です。私の私見が多く入っていますので、あくまで参考程度にご覧ください。