ディスカウント小売チェーン店を運営するダラー・ゼネラル
今回はこれまでの成長株とはちょっと違った企業を取り上げてみました。
ダラー・ゼネラル【DG】
米国のディスカウント小売チェーンを運営する米国企業です。
というのも、一般の消費者にとっては不景気になるとやはり家計のやりくりが大変になっていきます。
日本でもそうですが、そんな時に業績が拡大する小売業といえば「ディスカウントストア」形態の店舗です。
不景気なのか好景気なのかわからない日本では、もはやセリア等の100均ショップが当たり前のように存在し、業績も安定的に伸びています。
確かに同じモノを買うなら誰だって安い方がいいですよね。
それができる企業があるなら、そっちの方が良いに決まってる、という所から同社を調べてみる事にしました。
事業内容
ダラー・ゼネラルは、食品をはじめとする生活必需品を低価格帯で販売しているディスカウント型のストアです。
既存店ベースでは29年連続増収を記録しており、株価も緩やかながらも長年右肩上がりで伸びていっている企業です。
商圏は現在は米国内のみで行われており、ディスカウントストアとしてのシェアは全米トップクラス。
買収等はあったものの長年に渡り既存店売上は常にプラス水準で推移してきています。
品揃えは低価格帯の商品を取り揃えている事もあり、特定の収入層の米国民にとってはなくてはならない企業となりました。
一時期は多額の負債を抱えていたものの2007年の買収と上場をきっかけに息を吹き返しました。
それまでは細かい範囲にまで商品を取り揃えていたため常に在庫過多といった状態でした。
それを過剰な製品をなくし、本当に必要な製品を残し、比較的利益率のPB商品を取り揃えていく事で現在のような事業モデルが完成しました。
しかし、なぜダラー・ゼネラルがディスカウントストア業界においてここまでの規模までなったのか、それは同社の経営戦略にありました。
ウォルマート等の大手チェーン店が出店しないような、いわゆる田舎・地方を中心に出店を拡大する。
といった戦略が成功しました。
また、本来の同社のターゲット層は低収入世帯をターゲットとしていたため、
今(今後)の米国においては、同社のターゲット層となる世帯が増えそうだとも思われているようです。
そのため、1ドルショップではありませんが取り扱う商品は低価格帯のモノが中心となっています。
そして結果的に、低収入世帯だけでなく「顧客が欲しいものを置いている」という点で非常に満足度が高いため、今では低収入層の方以外にも多くの米国民が訪れている人気の店舗になっています。
低スペックな製品を1ドル以内に収めるのではなく、1ドルを超えていても必要な価値をしっかりのせた上で低価格で販売を行っている点が同社の事業拡大を牽引している、という事ですね。
業績について
直近の業績推移
まずは直近の業績から見ていく事にしましょう。
【2018年通期決算】
売上高:256億2,500万円(+9.2%)
売上総利益率:30.5%(-0.3ポイント)
営業利益率:8.3%(-0.3ポイント)
純利益(%):15億8,900万円 6.2%(-0.4ポイント)
調整後EPS:$5.97(+1.48)
で前期の決算は着地しました。
続いて、【2019年 Q1決算】を見てみましょう。
【2019年Q1決算】
売上高:66億2,300万(+8.3%)
売上総利益率:30.2%(-0.2ポイント)
営業利益率:7.7%(-0.3ポイント)
純利益(%):$3億8,500万(+5.5%) 5.8%(-1.6ポイント)
調整後EPS:$1.48(+0.12)
となりました。
ちなみに店舗数は227店舗増えて合計15,597店舗となりました。
出店スピードについては鈍化しておらず、1日3店舗ペースで増えていっているようです。
気になる点でいうと、売上の成長率は問題ありませんが利益率の低下が気になります。
下の方でこれまでの利益率についての説明をしていますが、それを踏まえて見ると、利益率については競合の影響が強いので引き続き四半期ごとのチェックが必要です。
過去の業績推移
まずは一番気になる売上と利益率の比較です。
直近10年間の業績をグラフ化してみました。

2009年はあまり参考にならないので、2010年から見ていくと2012年に頂上を付けた後、営業利益率は徐々に低下してきています。
ただ売上高については大きな鈍化や落ち込みは見られません。
とすると利益率低下の要因は競合との価格競争が表面化してきていると考えられます。
もしかするとこれからダラーツリー等のディスカウントストア同士の価格競争が始まり利益率の低下が続く可能性もあります。
しかし、純利益率を見ると営業利益のような低下は見られません。
これは、若干ながら支払利息の割合の減少と、大きな要因としては減税法案の影響により負担が軽くなった事で改善しています。
ただし企業としての実態を見るのであれば断然、営業利益を重視しないといけないため安心とは言いきれないようです。
次に店舗数の推移を見てみましょう。


出店店舗数は2017年を除いて毎年、約6%の割合で増加しています。
また日本とは違って人口も増えている国なので急激な需要減等の問題は当面は心配しなくて大丈夫だと思われます。
米国では現在ウォルマート等の小売店は伸び悩んでいるのに対し同社をはじめとする
ディスカウントストアの新規出店数の増加率
は目を見張るものがあります。
しかしながら、このままのペースで新規出店を進めていくといずれ頭打ちとなる可能性はありそうですね。
次に直近10年間のROAとROEの推移を見てみます。

どちらも右肩上がりで推移している事からも効率良く収益を出せている事がわかります。
ROEについては、ここ数年は20%のラインも越えており優良企業だと言えるのではないでしょうか。
純利益についても先ほどの減税の影響で2017年から1段階水準が上がりました。
このままの水準を保った上で売上が拡大していけばそこまで悲観的にならなくても良さそうですが今期以降で利益率の急激な低下や売上の伸び悩みが見られたら要注意です。
頭打ちによる売上の減少と競合の影響による利益率の低下
が実際に、一度業績に反映され始めたら、なかなか下げ止まり業績回復は事業モデル的に難しそうです。

最後に財務状況についてですが、こちらは全然問題ないです。
営業キャッシュフローも年々伸びてきており、投資も増加しているがそれ以上にもうけによる伸びが相対的に高くなっている点はとても良いです。
まとめ
今回は米国のディスカウントストア大手である「ダラーゼネラル」について調べてみました。
今後数年内に景気後退期へ突入する可能性が非常に高くなる中で
不況に比較的強い企業の業績をあらかじめ把握しておこうという事で今回調べてみました。
最後に一番の競合相手である「ダラーツリー」と指標を比較してみます。
【DG(ダラーゼネラル)&DT(ダラーツリー)】
●売上成長率 DG:+9.2% DT:+2.6%
●売上総利益率 DG:30.5% DT:30.4%
●営業利益率(減損調整後) DG:8.3% DT:7.8%
●EPS(減損調整後) DG:$5.97 DT:$6.2~6.4
●ROA(減損調整後) DG:12% DT:10~12%
●ROE(減損調整後) DG:25% DT:25~28%
指標を比較してみるとこのような感じになりました。総合的に見ると「ダラー・ゼネラル」に軍配は上がっていると思われます。
ちなみにダラーツリーの業績で気になる点については、
②(のれん減損を除いた)調整後でも営業利益率は前年9.0%→7.8%に悪化。
③同社ともほぼ同じような水準であり大きく影響しているのがやはり売上成長率の違い。
という所になると思います。
米国のディスカウントストアに投資するとしたら
ダラー・ゼネラルの方が良さそう。
というのは今のところ間違いなさそうです。そして、
実際に業績が後退し始めるまでは長期投資対象としてもアリ。
という、まとめ結果にしようと思います。
PERはどちらも20倍前半ぐらいなので多少割高にも思いますが業績もここ数年はずっと増収傾向にあるので
不景気に強そうな株という点も考えると米国市場全体が下がった時に割安な水準まで株価が落ち込めば買い向かっても良さそうです。
ただ長期保有にどこまで適しているかという点で見ると
バフェットでいう「消費者独占型企業」かというと将来的には違ってくるのかな、という感じもしますので、いざという時の引き際も大事そうです。
(※今でも別に消費者独占ではありませんが30年近く売上を伸ばし続けた点は、個人的にはそれに値するという判断があってもおかしくないはず、とも少し思ってます。)
価格競争が激しい業界というのは今までダントツだったとしてもどう転ぶかわからないので難しいですね。
ECの台頭でリアル店舗の必要性がなくなるとまではいかなくても今後も更に小売業におけるECの支配力が伸びていくと思われるので、保有する予定のある方は自分の中である程度のストーリーを考えておかないと判断に迷いそう、という感じがします。
でも当面は、まだ大丈夫だと思ってます。
私は「暴落時はチェックしておきたい企業リスト」に入れておく事にします。
※投資は自己責任です。あくまで参考までにお願いします。