
5G設備投資の業績寄与は今から
5G投資がどの程度の規模になるかと考えた時に参考にして欲しい情報があります。
それは、
基地局内にある無線機の設置数が日米韓中で昨年は2万台だったが2025年には桁違いの990万台に到達するとの予測がある。
という業界の予測があります。
急激に拡大する基地局内の無線機において、日本のキャリアが公表している現時点での投資額は他国に比べ、あまりにも少なすぎる額で公表されています。
公表されている投資額の何倍もの額が実際は必要になる事は間違いないでしょう。
しかし、予測されている無線機については圧倒的に海外企業のシェア率が高い。
正直なところ、無線機だけで見ると日本企業への恩恵は思っているより少ないのです。
ただ、拡大の規模があまりに多いので周辺機器等の増加も必ず起きるため、5G投資によって恩恵のありそうな日本企業を一部紹介します。
様々な企業が関与するであろう5Gにおいて業績への寄与が高くなりそうな3つの銘柄を紹介します。
5G投資関連の有力企業
- アンリツ
- PALTEK(ザイリンクス販売代理店)
- 太陽誘電
アンリツ(6754)
同社が5G関連で期待されている部分は検査機器の製造・販売という面においてです。
5Gは従来の通信技術とは異なり、スマホ等の端末以外にも製造業やIoT等にも大きな需要があります。そのため、今までのように新しい通信規格の拡大時である短期間だけ業績が良いと見られてきた同社ですが
今回の5G拡大期については、期間が長く、案件も多くなると考えられているため業績への影響が今までよりも大きくなるのではないかと期待されています。
4月26日に発表された直近の決算発表での失望売りと米中貿易摩擦の激化で年初の水準に戻ってしまいましたが、やり直しのチャンスと見ています。
前期は売上高14%増、営業利益129%増という申し分ない業績でしたが今期の予測が失望売りを招いたようです。
2020年3月期の通期予想を見てみます。
- 売上高:1,020億円 (+2%)
- 営業利益:100億円 (-11%)
今回の決算発表で5G関連事業の業績寄与を期待していた投資家たちによる失望売りのようです。
わたしは今回の決算発表は恐らく、米中摩擦の影響も多めに盛り込んでおり、保守的な予測を公表したように思います。
実際に直近の四半期業績を見ても成長力は鈍化していません。多少落ち着く事はあっても、最終的に減益になる可能性は低いと思っていますのでどこかで上方修正で一転増益になることを期待しています。
昨年も上方修正を2回も発表していますので、可能性は非常に高そうです。
中期的な投資を考えている方はアンリツはお勧めです。
PALTEK (7587)
まずは直近の業績を見てみます。
2019年12月期の通期予測は
- 売上高:280億円 (-8%)
- 経常利益:25億円 (-16%)
となっており、半導体事業の売上の減少が大きく響くような予測となっています。
5G時代では現場でのプログラムの変更・修正等ができる「FPGA」の導入拡大が見込まれており国内ではPALTEKが最有力と見られています。
PALTEKはFPGAの最有力企業である米ザイリンクスの販売代理店になっているので、現場への導入が進んだ場合は大きな業績向上に繋がるはずです。
会社の決算資料からも 現時点では、期待のFPGAについても大きな増加は予測していませんが、下期以降~来期にかけて業績に寄与してくるものと思われます。
5G関連企業として実際に業績に関与してくるのは日本の5G環境がもう少し進んでからになるかもしれません。
もし、米国株を考えているのなら直接、XLINX(ザイリンクス)に投資するというのも良いかと思います。
太陽誘電(6876)
チップ積層セラミックコンデンサー(MLCC)を製造する電子部品製造企業です。5Gに対応するために性能向上を目的とするスマホ用部品の高機能化に一役買うと見られています。
5Gに対応するにはスマホの仕様も従来のモノとは異なります。その際に多用されるであろう部品にMLCCがあり、高機能化を進めるには欠かせない部品のひとつです。
2020年3月期の通期予測を見ていくと
- 売上高:2,900億円 (+5%)
- 経常利益:380億円 (+8%)
と増収増益の会社予測を出しています。
前期の決算内容を見ると全体の構成比の6割を占めるコンデンサ製品の売上では売上高1,700億円(前年比19%増)と既に2桁増収となっています。
既に拡大局面は始まっており、通信機器メーカー各社から販売されるであろう5G対応機種が出揃うのが2020年以降と予想されているので今期あたりから実際に業績への寄与を高めていくものと思っています。
乗り遅れる前に、貿易摩擦の激化で再度下落した今がチャンスに思います。
PERも10倍台と割高感もなく、将来見返した時に今が絶好の買い場になっていそうです。
まとめ
本来、無線機のシェアでいうとフィンランドのノキアやスウェーデンのエリクソン等の海外勢が強いのが定石です。
海外企業への投資を考えている人であれば上記のような企業への投資は安定した業績拡大が見込めそうです。
今回ファーウェイの締め出しにより世界各国の株価が下落してみましたが、簡単に考えてみてください。
5G投資は引き続き拡大するが、ファーウェイの存在感が薄れる、と。
さらに中国企業の旨味は、「安価」という点で拡大してきたところがあります。
この2点を踏まえて考えてみると、ファーウェイの穴を他社が底埋めし、適正な価格で5G投資の拡大を図る事ができる、とも考えられるはずです。
ただし、純粋にそう判断できない点が
5G投資先の主要地域が中国と米国であるという点です。
中国・米国の無線機関連の伸びは、他国に比べると大きく異なります。
5Gの特徴のひとつとしてカバーできる範囲が従来の4Gよりも狭くなっています。日本の国土の何倍もある中国、米国の設置数が大きくなるのは物理的に当たり前の事なのです。
主要地域の1つである中国での5G関連がファーウェイをはじめとする中国企業がメインで行うようになると、それだけ他の企業の入り込む余地は減ってしまいますので引き続き流れを注視する事が必要です。
日本の5G用無線機の設置数は米国・中国に比べると小粒なため、無線機の面で投資をするのであれば、この分野は海外企業に妙味がありそうです。
残念ながら日本企業が日本の基地局関係で入り込めるのは無線機以外の設備の方だけになるでしょう。